本来とても穏やかな人なのだが、本気で怒れば手を挙げることがある、というのは、結婚する前からわかっていたので、ぎりぎりまでいきそうになると、本気で怒らせないように、こちらが用心深く迂回するようにしてきた。が、とうとうわたしの駄目っぷりが限度を超えてしまい、言い争いになる。
頭を殴られたときは明らかに手加減しているのがわかったが、わたしが頭をかばって背を向けたら、腰を斜め後ろからまともに蹴られてぎっくり腰のような状態になり、立居に不自由する。怒るのは無理ないと思うが、殴るのだけはやめて、としか言えない。
(幸いにして、というべきか、いや、それが直接の原因なので、何ともいえないが)すぐそのままわたしが出張で、今は家から離れてひとり。
デモ用のノートPCが重くて肩にかけるバッグでは腰に響くので、空港にたどりついたところでキャスター付きの小さめのトランクを買い、荷物を移し変える。店員に、「ちょっと腰ひねっちゃって」と笑いながら言い、荷物を入れ終わったトランクを、床に降ろすのを手伝ってもらう。まあ、仕事を終えて家に帰る頃には、痛みも気にならなくなるだろう。