出張先の会場入口近くで、朝、赤ちゃんを前抱っこした女性を見かけ、ああ、託児室に行くのだな、と思う。その女性の近くに、もうひとり、年長くらいの男の子を連れた女性。ちょっと距離があって顔がよく見えないので確信はなかったが、多分わたしの知っている人じゃないかな。研究領域が近いので、学会で時々会う人だ。そういえば、以前子供が生まれたと聞いたような気がするが、もうこんなに大きくなったのか。
で、近づいて声をかけようかと思ったのだが、何だか様子が変だ。男の子が乗り物酔いをしたのか、ぐったりと母親に抱きついている。母親は、片手で息子を抱きかかえるようにしながら、もう一方の手で口元に紙袋をあてがっている。スーツ姿。背中には、大きめのバックパック。今日発表なのだろうか。
遠くからしばらく見ていたのだが、助けが必要なほどでもなさそうだし、かといって、立ち話ができるような状態でもないので、声をかけるのをやめて、発表の打ち合わせ場所に急ぐ。
託児をしてくれる学会は貴重だ。ここも、毎年当番校がいろいろ工夫をして、ようやく定着した。いいことだと思う。それでも、子連れで学会に来るのは、大変だ。
帰路につく前に、子供たちが学童クラブから帰って来た頃をみはからって、自宅に電話。すぐに娘が出る。
「元気?」「うん、元気だよ。」
「お兄ちゃんは?」「ゲームしてる。」
「パパはまだ?」「うん、まだ。」
「パパが帰ってくるまで、大丈夫?」「大丈夫だよ。」
「ママ、これから帰るけど、家に着くのは11時過ぎるから、先に寝ててね。」「うん、わかった。」
行きは、早朝の飛行機にした。なるべく効率よく会場に行って、いろいろな発表を聞きたかったから。帰りは、遅めの新幹線にした。ひとりでいられる時間を少しでも長く取りたかったから。
が、娘の声を聞いたら、帰りも飛行機にすればよかったかな、と思う。子供たちがまだ起きている時間に帰れただろうから。
いつも、こうやって、ぐらぐら揺れる。