2002-04-01 [長年日記]

_ やっと書けた

ちょっとタイミングを逸していたのだが、やはり書いておきたいので。感想を書きます、と言っていた「神谷美恵子日記」(角川文庫)。実はずっと持ち歩いていて、しかも何度も読み返していて、本はよれよれになった。出張の往復の新幹線でじっくり読んだり、夜寝る前にちびちびっと読んだり。コーヒーをこぼしたり、ビールも数滴沁みになっている。最初に戻って読んだり、後半のすでにメモをはさんであるところを繰り返し読んだり。

30代半ばでふたりの子どもを出産し、本格的に自分の仕事に打ち込めるようになったのが40代半ばから。もちろん、素質も蓄積もあったからこそなのだが、彼女でなければできない仕事をした人だった。周囲の人々の幸せを願いつつ、しかしながら自らの使命とするところを忘れず、自分のやるべきことは何かを見失わなかった、その真摯な生き方に圧倒される。

わたしが「嫉妬」と呼んだもののひとつは、実はこれだった。残された40年分の日記のうちのわずか数%の抜粋だが、それだけに、人の一生を、それこそ風が駆け抜けるがごとく一気に感じ取ることができる。

_ さらに抜粋

今朝は台風一過という感じですがすがしく晴れわたり、陽の光り、緑の色すべてがきらめいている。秋冷とも言うべき大気の中でゆうべの洗たくものを干しながらこの夏はじめてと言いたい位の「新しい門出」と言った気分におそわれた。俗な利害を超えてこれからの進路を考えたい。(1959年8月11日、45歳)
ああ、私の心は、この長い年月に感じとったもので一杯で苦しいばかりだ。それを学問と芸術の形ですっかり注ぎ出してしまうまでは死ぬわけにも行かない。ほんとの仕事はすべてこれからだというふるい立つ気持でじっとしていられない様だ。(1959年12月2日、45歳)
昨日からの寒さはやわらぎ、昼の太陽はあかるく、夜の月もまどかである。(略)「死」と「虚無」をのぞきながら、私の心の深いところでしずかに、着々と、課せられたものを果して、いつでも死へ戻れる用意をしたい。(1961年1月3日、47歳)
体力のおとろえつつあるとき、人間はよほど注意ぶかく仕事を選択する必要がある。名誉心にとらわれてはならぬ、ましてや物質的欲望にとらわれてはならぬ。この世を去るにあたって、何を優先的になすべきか、これを常に問題にすべし。(1963年11月1日、49歳)
時間がない、時間がせまているという意識にどうしてこんなに追われるのだろう。それが私の文章をズサンにするのだ。朝のセミの音にきき入りながら、もっと「永遠の時」に生きたいと願う。かけてもかけなくとも、間に合っても間に合わなくてもいいのではないか。ただ一生懸命生きたというだけで!たくさんの苦しみ、悲しみと、たくさんのめぐみとをうけたこの一生を?(1965年8月9日、51歳)
仕事に熱中しているときひとは無時間の中にいる。それは不死の時であるが、同時に、死に知らぬ間に近づいている。(1968年3月20日、54歳)
自己嫌悪に悩まされる。私という人間の悪さは、まさに死ななきゃ治らない。死よ、とく来よ、と言いたくなる。周囲の者にとって、私はどんなに重荷であろうか。(1969年6月23日、55歳)
しずかな朝、すきとおるばかり。南天の実いよいよ紅く、小鳥のさえずりしきり。しずかな日々のとおとさ、いとおしさ。夕べになりて明るくなるべしとのいにしえの人のことばは、生の終わりになって、その真なることを示される。(1972年10月18日、58歳)
やっとふつうのからだとあたまになった。朝、自分に対しておごさかな誓いをたてる。
一、しごとはできるとき、できるだけする。「ノルマ」で自分を縛らぬこと。
二、眠れないときはそのままおきていて、日中でもいつでも眠れるとき眠る。
(1973年8月3日、59歳)
人を愛するのは美しい。しかし愛することさえできなくなった痴呆の意識とからだはどうなのだ?だから愛せる者よりも価値が低いと言えるか。くるしみに耐えること、ことに他人に与えるくるしみに。( 1979年1月19日、65歳、同年10月没)

_ 生きる

彼女がそうなのか、それとも、抜粋するわたしがそうなのか、とにかく、死と時間というところにすべてが凝縮される。生きる、ということのさまざまな枝葉をそぎおとすと、結局残るのはそこになるのかもしれない。

どう生きるにしても、人として生きる方向を自らさぐっていかなければ生きたことにはならないのではないか。人と比べても意味はない。まして、物事の価値は相対で決まるものではない。使命、とまでは言わないが、やはり誰から言われるでもなく誰から認められるわけでもなく、自分だけが気づくことのできる、この世に生を受けたことによって自らに与えられたのかもしれない果たすべきことがらを、見極めて実現していくことで、はじめて人は生きたと言えるのではないか。

いや、そんなことは一切考えなくても、人は生きて死ぬものだが。だがしかし、もう一度振出しに戻って考えてみる。このまま死んでいいか。

_ 軌道修正

トップページのprofileを一部書き直しました。これで、以前ちょっと予告めいたことを書いた軌道修正のための準備完了ということになります。

本日のツッコミ(全11件) [ツッコミを入れる]
_ dd (2002-04-02 10:37)

今日はDSにいる。インディのFPをとってMYSTIC...携帯で実況。

_ dd (2002-04-03 09:42)

昨日の自分のツッコミ。フルに書くとこうなる。意味不明と思われた方すいません。
今日は東京ディズニーシーにいる。インディ・ジョーンズ・アドベンチャーのファストパスをとって、ミスティックリズムのショーを見るために並んでいるところ。

_ umeya (2002-04-03 12:12)

その略号で通じる方への、個人的伝言かと思ってしまいました(^^)。携帯からだと入力がかなり制限されるので、とっさに略号でここにメモされるのもありだと私は思ってますが。

_ umeya (2002-04-03 12:13)

ところで「ファストパス」って何ですか。普通のパスより特権が多いのかな。

_ Akimbo (2002-04-03 12:41)

「ファストパス」って、「時間指定予約券」のことだったと思います。事前にその券を取っておくと、券面に書いてある時間に優先的にアトラクションに搭乗できるという。

_ Akimbo (2002-04-03 12:43)

確かに最初のツッコミは、「辣腕の女スパイ、コードネームは"DD"」って感じだったですね。

_ dd (2002-04-03 13:27)

コードネームdd。今日は新しいブツのセッティングのための小道具を調達した後、RHで補給の途中にuとaの会話を傍受。昨日の作戦失敗を反省するも、懲りず。

_ dd (2002-04-03 17:27)

また悪乗りして失礼しました。
今仕事用の新しいパソコンをセッティングしていて、ちょっと周辺の物を買いに外に出たついでに、ロイヤルホストでひとりでランチをしていて、ツッコミを読んだのでした。
携帯から日記の更新もできる(まだやってないけど)し、ツッコミもできるけど、わたしの場合、携帯の入力スキルに見合った量と質、というのがありそうだな。やめといたほうがいい、ということかも。

_ umeya (2002-04-03 18:39)

>c05 Akimboさん、解説ありがとうございます。確かに、お目当てのアトラクションが決まっていれば、そういう仕組みがあったら便利ですね。遊園地も年々進化しているようですね。

>c07 その「傍受」ってのは我々のことですか(笑)。お茶ふきそうになりましたよ(すんでのところで無事でしたが)。
 

_ dd (2002-04-03 23:07)

ファストパスはなかなかいいです。昨日は、インディの次に、ストームライダーのファストパスを取りました。そのあとはもうどこも発券終了で駄目。
何の下準備もなしに行った割には、比較的効率よくアトラクションを見て回れたのも、ファストパスのおかげだと思います。ずっと前から子ども達にせがまれていたTDS行きをようやく果たせて、良かった良かったの一日でした。
というより、春休みらしいことはこの1日でお終いなので、ごめんなさい、というのもあるんですが。

_ Akimbo (2002-04-05 07:18)

 わはは。千絵さんなら乗ってくれると思いました。